合成洗剤の歴史

短期間で発展した合成洗剤

合成洗剤が日本に登場してから約60年が経過しています。
大量宣伝によって各家庭に合成洗剤が普及し、化学物質が大量に消費され、排出される社会になってしまいました。現在の日本で、家庭や事業所で使われ、環境中に排出される最も多い人工化学物質は、合成洗剤などを代表とする洗浄剤と言われるほどです。

合成洗剤の販売量年間100万トン

経済産業省の統計によると、合成洗剤(洗濯用、台所用、住居用)の販売量は年間約100万トンにのぼります。100万トンというと、東京ドーム約3個分に相当します。つまり、年間これだけの量の合成洗剤を下水、河川、海に捨てているということになるのです。また、合成洗剤の主成分である合成界面活性剤は、洗濯用、台所用以外にも、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプー、リンス、トリートメント、トイレ洗い、車洗いから化粧品、医薬品、農薬など多方面に使われており、実際の排出量はもっと多くなります。

合成洗剤は、「ソープレスソープ」

合成洗剤とは、石鹸に使用される脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム以外の界面活性剤が配合された洗剤のことです。石鹸でも合成洗剤でも、汚れ落としの主成分は「界面活性剤」です。しかし、合成洗剤の主成分である界面活性剤は、石油や動植物の油脂などを原料にして、高温高圧のもとで、化学合成によって作られる界面活性剤です。合成洗剤は、発売当時、「ソープレスソープ」つまり、「石鹸が入っていない石鹸」「石鹸ではない洗剤」と呼ばれていました。

世界で初めて合成洗剤が誕生

第一次世界大戦中、ドイツで最初の洗浄用合成界面活性剤である「AS(アルキル硫酸エステルナトリウム)」が開発されましたが、これから合成洗剤の歴史がスタートしたことになります。戦争中、食糧事情が悪化し、食用油脂が極端に不足したため動植物油から石鹸をつくることが困難になり、天然の油脂を必要としない洗浄剤の開発が必要だったのでした。

そして、第二次世界大戦中も石鹸の材料となる油脂不足のため、石油を原料にした「ABS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)」という界面活性剤が開発され、石鹸の代わりに軍需用として使われました。第二次世界大戦後、アメリカでこのABSにリン酸塩を加えて洗浄力を高めた一般家庭向けの合成洗剤が発売されました。洗剤イコールABSというほどまでに急速に普及しましたので、ABSは今日の合成洗剤の発展に最も貢献した界面活性剤と言えるでしょう。また、リン酸塩などの「ビルダー」と呼ばれている洗浄効果向上剤の開発も、戦後合成洗剤が急速に伸びた大きな理由の一つです。

石鹸の歴史に比べると、現代の洗浄剤の主流である合成洗剤の歴史は極めて浅く、短期間で劇的な発展を遂げたことになります。

日本における合成洗剤の変遷

日本における合成洗剤の歴史は、1950年にアメリカから輸入されたABSを原料にして合成洗剤の生産が開始され、電気洗濯機の普及とテレビCMの効果で家庭に普及しはじめました。1963年には、石鹸の生産量よりも合成洗剤の生産量の方が多くなりました。合成界面活性剤は登場したときから、流れ出た合成洗剤で川が泡立ったり、手荒れなどの皮膚障害が発生したり、魚毒性(水中の化学物質が魚介類に与える障害の指標)の強さなどから生物環境への影響が問題視されていました。

合成洗剤の課題

1974年に朝日新聞に掲載された有吉佐和子の「複合汚染」は、農薬や化学肥料の使用の批判と同時に合成洗剤による人体と生態系への影響について告発し、一気に社会問題化しました。家庭や自治体などでも合成洗剤をやめて石鹸を使用する運動が盛んになり、1979年の「琵琶湖条例」(滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例)の制定へとつながっていきました。合成洗剤に配合されていたリン酸塩は、植物の3大栄養素(チッ素、リン酸、カリ)の一つで、川や海に流れ込むとアオコや赤潮の原因になります。

こうした合成洗剤の欠陥に対して、洗剤メーカーは合成洗剤に配合してきた助剤のリン酸塩の使用をやめ(無リン洗剤と呼ばれていました)、界面活性剤を難分解性のABSからLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)に変更していきました。界面活性剤がABSから分解性のよいLASに切り替わることによって河川の泡立ちは減りましたが、依然として完全分解はしないために、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)の環境中の残留濃度は低いとはいいがたい状況にあるため現在まで水汚染問題が続いています。

粉末だから粉石鹸とは限りません

品名には、「台所用合成洗剤」とか「洗濯用合成洗剤」と表記されていますが、テレビCMでは「これは合成洗剤です」とは、決して宣伝しませんので、粉末の合成洗剤を粉石鹸だと誤解している人も多いようです。粉末だから石鹸とは限りません。

2019/06/14